2017/09/04
Vintage Fashion② パティ・ボイド~ジョージ・ハリソンとエリック・クラプトンに愛された女性
「モデルだった頃。私を撮ってくれるカメラマンに教わったの」
パティ・ボイドはビートルズのジョージ・ハリソン、エリック・クラプトンの元妻である。60年代、とびきりのファッション・アイコンで、彼女の自伝を読み(『パティ・ボイド自伝 ワンダフルトゥディ』)。自分の生きている時代に自覚的な女性だと感じた。ジョージは彼女のために「サムシング」を、クラプトンは「愛しのレイラ」を書いた。
ミニの黒いワンピースに網タイツ、ヘアドライヤーと脱ぎ捨てられたパンプス。ホテルの一室だろう。大きな鏡に映るカメラを持ち、足を組んだフォトグラファーとして自分を映している。
彼女の写真展が銀座で開かれていた。ミック・ジャガーやキース・リチャーズ。60‘sにロックシーンを彩ったスターたちが写真の中でくつろいでいる。
ジョンとポールもそこにいた。1967年撮影とあるから「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」制作の頃だ。他のロックシンガーたちとは違って、虚無的で、投げやりで、笑顔のないモノクロームの作品だった。彼らの写真は他に何枚かあったが、自筆サイン入りで20数万円のすべてが売り切れていた。
東京はゴールデンウイーク直前で、ポールの来日公演と重なっていた。前回のライブは3度観ている。だから今回はチケットを友人に譲っていた。
写真を観終わり、銀座から日比谷方向へ歩いていると、人垣が。宿泊先のペニンシュラからポールが東京ドームに出かけるところだった。
待つこと10数分、「レジェント!」「ポール・マッカートニー」と二人連れの白人が隣で囁いた。
迎えの黒いレクサスに乗る前に、ポールが大きく手を振った。
パティの写真では20代、目の前のポールは70代だが、今のポールの方がずっと清潔に見えた。
このエッセイを書いた人
延江浩
作家・ラジオプロデューサー
小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合(ABU)ドキュメンタリー部門グランプリ、ギャラクシー大賞、放送文化大賞准グランプリ、芸術祭ドキュメンタリー部門優秀賞、放送文化基金ラジオ番組賞、民間放送連盟優秀賞、放送人グランプリ2017年優秀賞 近著『愛国とノーサイド』(講談社)