2017/12/08
Vintage Car ⑤ トヨタ・プリウス誕生20周年
晩秋恒例の旧車イベント“2017トヨタ博物館クラシックカー・フェスティバルin神宮外苑”(11月25日開催)を見てきた。トヨタ博物館主催による旧車の祭典で、100年以上前のヴィンテージカーから1980年代のちょっと懐かしいモデルまで、多数の国産・輸入車が明治神宮外苑・聖徳記念絵画館前を埋め尽くした。
数ある展示車両の中から今回は、企画展示されていた初代トヨタ・プリウスを取り上げる。理由は、技術面でヴィンテージカーと呼べるからだ。
初代は、今からちょうど20年前の1997年12月にデビュー。世界初の量産ハイブリッドカーとして全世界から注目を集めた。ボクは当時、某トヨタ系ディーラーへの就職内定が決まっていた学生の身で、「10・15モード燃費28km/L! これは凄いクルマが出てきたぞ。早く乗ってみたい」と思ったが、残念ながら入社先はプリウスを扱っておらず(現在はトヨタ全店で販売)、すぐには触れられなかった。
だが、就職後は「取り扱い車種でなくて良かった」と思った時期もあった。なにせプリウスについては「車両価格215万円では利益が出ない」「整備には電気関連の知識が必要で、下手すれば感電」「車載電池の交換には何十万円もかかる」などなど、ディーラー内でもネガティブな噂や情報が多かったから。実際に乗っても、初期モデルは充電が切れてエンジンのみの走行になると明らかにパワー不足だったし、回生協調ブレーキの制御にも違和感があった……。
そんな色眼鏡で見られている面もあった初代プリウスだが、20年後の現在、ハイブリッドカーは世の主流となり、旧型と現行モデルはベストセラーカーにまで上り詰めた。前述の課題もほぼ解消されている。プリウスがなければ、クルマの環境性能の進化は大きく遅れたはず。プリウス開発陣の先見の明とたゆまぬ努力には、ただただ頭が下がる。
(写真のモデル)
初代トヨタ・プリウス(1999年式) 世界初の量産ハイブリッドカー。実用的な4ドアセダンでサイズ(全長×全幅×全高:4275×1695×1490mm)は扱いやすいカローラ・クラス。パワーユニットは1.5L直4ガソリンエンジン(58ps)と電気モーター(41ps)の組み合わせ。
このエッセイを書いた人
佐藤やすのり
1974年生 神奈川県出身 物心つく前からのクルマ好きで、赤ん坊の頃からトミカのミニカーを愛用。16歳からレーシングカートでレース活動に勤しみ、大学卒業後は国産カーディーラーに就職して新車セールスを約3年間経験。その後、自動車雑誌編集者へ転職し、現在にいたる。複数誌を渡り歩き、『カー・アンド・ドライバー』では副編集長として好みのクルマばかりを取材。最近、自動車業界紙へ移り、お堅い書籍の編集長に就任。得意ジャンルは国産ニューモデル、ドイツ車、中古車、モータースポーツ全般。